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2011/06/06

Y Combinatorの過去5年間のパフォーマンス(ROI)は30倍?



先日、Y Combinatorの業績についてTechCrunchで取り上げられていたが、その記事が少しわかりづらかったので自分なりにまとめてみた。




記事:
ポール・グレアム、Y Combinator出資スタートアップの会社総額は47億ドルと明かす


≪ポイント≫
・Y Combinatorはこれまでの6年間で316社のスタートアップに投資してきた。
・YCは通常、一社当たり$15Kを投資して、2-10%の株式を取得する。
(その持株はスタートアップが大型増資に成功すれば希薄化される。)
・2010年の夏までの5年間では208社に投資。
・そのうち、トップ21社(トップ10%)の企業価値総額は$4.7B(47億ドル)。

以上の情報に基づいて、概算すると以下の事がわかる


1)5年間の総投資額:208×$15K=$3.12M

2)トップ21社以外の企業価値を0とすると、5年間で生み出した企業価値は$4.7B

3)そのうち、各社2%の株式を保有していたとすると約$94M、株式の売却によってリターンを得る、あるいは得たことになる。

4)リターン÷総投資額(5年間のROI):$94M/$3.12M=30.13


≪YCのパフォーマンス≫
YCは5年間で投資額($3.12M)の30倍のリターンを得ている。
ちなみに、この計算ではトップ21社以外の企業価値0と仮定しているし、株式の保有比率も2%と低く設定しているので、この30倍という数字はミニマムの数字として考えて構わないだろうと思う。

≪YCは成功していると言えるのか?≫
YCはほぼ間違いなく成功していると言えるだろう。
しかし、YCのパフォーマンスを評価する際に注意しなくてはいけないのは投下する労働力の量である。
YCのプログラムの特徴はただ投資するだけでなくメンターと共にサービスを作り上げていくことであろう。つまり、優秀なメンターの質の高いアドバイスが彼らの投資先企業の企業価値向上に大きく貢献していると言える。しかし、これは見方を変えれば”非常に手間がかかっている”とも考えられる。
各メンターの優秀な労働力を投下していることの機会費用を無視したROIのみの計算では彼らの正しいパフォーマンスは評価できないだろう

≪YCのためにフルタイムで働くメンターは何人くらいいるか?≫
以下はYCのHPより抜粋(http://ycombinator.com/atyc.html

There are four of us who advise startups full-time: Paul Buchheit, Harj Taggar, Jessica Livingston, and me. Two other YC partners, Robert Morris (also a professor at MIT) and Trevor Blackwell (also the founder of Anybots), advise startups on technical matters. We also have a designer in residence, Posterous cofounder Garry Tan, who helps the startups with their sites, and a lawyer, Jon Levy, who gives all the startups legal advice and does their basic legal work for free.
The individual conversations with the startups happen during office hours they book online. There's no limit to the number of office hours they can book

上記よりわかることは
1)4人のアドバイザーがいる
2)2人のテクニカルアドバイザーがいる
3)1人のデザイナーがいる
4)1人の法律関連のアドバイザーがいる
5)YCのプログラム参加者は彼らとの面会予約を無制限に行うことができる=上記のアドバイザーはYCにコミットしている

すなわち、少なくとも8人の労働力がYCにフルに投下されていると言える。


≪機会費用の考慮-それでもYCは成功している≫
5年間のリターンの推定額$94Mを上記の8人で分けるとすると、一人当たりの1年間のリターンは約$2.35Mになる。
この数字をどう評価するか?
米国のCorporate, Business, Mergers & Acquisitions関連の弁護士の給料が高くても$166,166であることを考えると(Pay Scale:Salary Snapshot for Attorney / Lawyer Jobs)、一人あたりの年間リターンが$1.9Mというのは十分に成功していることを示す数字と言えるだろう。

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